2-1-5.整理整頓で作業が早くなり、在庫管理で金利低下と鮮度アップ
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加熱料理で、惣菜のフライや焼き物製品などでは、一般的に、加熱後中心温度が「75℃から85℃」というのがCCPの許容限界(CL、クリティカルリミット)になる。

この場合、75℃未満は、食中毒菌の生残という危害があるので「安全限界未満」ということになる。これに対して上限の85℃以下というのは、これ以上温度が高くなってしまったら、ジューシーでなくなって美味しくなくなる、重量が軽くなる、といった品質上の問題が出るからだ。そんな製品を出荷したら、安全性は問題無くても美味しくない。美味しくなければ売れない。製品が売れなれば企業の危機になってしまう。

ということで、75℃以上は「安全限界」、85℃以下は「品質限界」になる。

さて、HACCPを始める前、この問題はどうしていたか。経験豊かな人が調理すればうまくいくが、その人以外がやったら不安定になる、という実態のところも多いだろう。科学的に管理されていなければ、製品が不安定になる危険が大きいことが当たり前だ。経験は素晴らしいものだが、工業的になると、フードサイエンスで管理しなければならない。HACCPを始めるに当たって、温度計を初めて使い出したところも多い。

温度計を使い出したら、如何に不安定だったかがわかり、安定した温度に仕上げるために、加熱温度、時間のデータを精密にとり、例えば「80℃、プラスマイナス3℃以内」に連続して製造できるようになったとき、「安全」なおかつ「高品質」が確保されることになる。

そして気が付くことは、

「不良品が減り、ロスが減り、ミスが減り、失敗が減り、工場の稼働率が高くなる。」そして、販売力が増し、利益が出ることにつながる。

2-1-5.整理整頓で作業が早くなり、在庫管理で金利低下と鮮度アップ

整理は「要らないものを捨てる」、整頓は「あるべき所に置く」

原材料、副材料、資材、製品、道具など、整理整頓することで、探す時間が無くなり、在庫管理がやりやすくなるので、これもコストダウンにそのままつながる。

ある食肉のパッケージ工場では、ドリップ、変色といった品質絡みのクレームが年間百件もあった。清掃洗浄も良く出来ていない状態なので、一般的衛生管理の徹底を進めなければならないことは判っていたが、その前に冷蔵庫の整理整頓から始めた。特に原材料が入っている冷凍庫と冷蔵庫の乱雑さは大変なものだったので、大掃除をした所、不良在庫や何に使うか判らない在庫がごろごろ出て来た。結果、在庫量は半分になり、余裕が出たので、置き場所を決め、先入れ先出しも簡単に出来るようになった。在庫も一目で分かるので、無駄な発注がなくなり、鮮度も良くなった。

回転が早くなり、スライスパックの製品の品質が見違えるように良くなり、1年後、クレームは1/10になり、在庫圧縮と回転率アップで資金繰りも改善した。

2-1-6.清掃洗浄の時間短縮と効果アップでコストダウン

弁当工場で古いコンベアの洗浄がやりにくいため、時間がかかる上、ベルトを外すのが大変だったため、週に1回しか分解洗浄が出来なかった。そのためコンベアベルトの隙間と裏側に汚れがいつも溜まっていて、監査で指摘されていた。

改善策を考えていた所、コンベア下側でベルトを支えているローラーが簡単に外せることが判り、2本外してみたら、ベルトがだらりと垂れ下がった。もしかしたらとコンベアを動かしたら、だらりと垂れ下がったまま回る。これはしめたと、回しながら垂れた部分を高圧洗浄し、泡洗浄をかけ、水で流したあとエアプレッシャーで乾燥させる一連の洗浄が簡単に出来るようになった。これで、1週間に1回2時間かけてやっと行っていた分解洗浄が、

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