2-2-9.全てを構築しないと動かないのでは?という誤解
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理が異物混入を始めとする多くのクレームを低減させるものであるから、製造作業そのものを知らなくても、常識的な衛生管理、サニテーションを評価できればよい。製造そのものに関する監査、CCP部分に関する評価は、その製品の特質を良く知っていたほうが良いが、かなり広い範囲をカバーする一般的衛生管理の監査は、「きれいであるか」「忘れているところはないか」というシンプルな視点で工場内を見ることになる。

2-2-9.全てを構築しないと動かないのでは?という誤解

販売先から「HACCPを構築して欲しい」という要請を受けた食品メーカーの方が来られて「どのくらいの期間がかかるか?」と聞くので、「2年ぐらい」と答えたら「え~~、困る!」と嘆いた。でも、嘆くことはない、HACCPは土台となる一般的衛生管理の構築から行なっていくが、少しでも進めるごとに効果はしっかりと現れていく。

初期に行なうことに、施設設備機器の清掃とメンテナンスがある。それまで行なってきた方法を見直し、より確実で合理的な方法がないか検討し、何よりも大事な「頻度」を決めて実施し始めると、工場内が次第にすっきりときれいになっていく。これそのものが異物混入の原因を取り除き出したことになる

防虫防鼠の検討で、虫が入り込む隙間をふさぐことで、虫の侵入が押さえられることになる。ドアやゲートを開けっ放しにすると虫が入るのですぐに閉める、というルールを、全従業員に理由と効果を含めて教えることで、防除する体制を整えることが出来る。

こういった活動を毎月一つずつ着々と進めていくことで、工場の一般的衛生管理が充実していき、結果としてクレームの減少という喜ばしい結果が次第に現れてくるだろう。このような中で、加熱調理後の温度を測定し始めると、温度の状態がどのようになっているかが実態としてわかってくる。かなり不安定だなとわかったり、加熱しすぎだったりといった状態が、科学的にわかり、それを直しながら、測定の方法と頻度を決めていくことで、安全で、なおかつ、品質面でも美味しい製品が出来るようになってくる。この活動がHACCP本体になる。

2-2-10.同じ製品を作る工場なら似たものになる、という誤解

ある食肉メーカーは、ローストビーフを、東京と大阪の2つの工場で製造している。同じ生産システムで、調理を行なうフランス製の機械も同じものを使っている。しかし、HACCPのCCP は、大阪が、加熱調理、その後の冷却、そして金属探知機、という3ヶ所なのに対して、東京は金属探知機部分の1ヶ所である。両方とも総合衛生管理製造過程の承認を得ている。この工場の構造は、同じ調理機械があるというだけで、レイアウトも動線もゾーニングも違う。ローストビーフだけ作っているわけではないし、第一従業員が違う。であるから一般的衛生管理も全く違うものになるのは当然である。住宅やビルが一つ一つ違うように、HACCPは工場ごとに全部違うのである。

HACCPの文書作成の「書式」はないのかという疑問も出ることがあるが、そのような書式は無い。このようなものを基本に、各工場ごとに作成したら良いといった参考書式はあるし、既に構築している工場の資料を参考にして作っても良いが、役所への届出書のように、それに書き込めばいいというものは無い。HACCPは工場ごとに工夫をして構築するものなので、従事者にわかりやすい文書を運営がしやすいように作成していけば、当然工場ごとに全部違っていくことになる。

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