リテイルHACCP:惣菜、給食工場のHACCP
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FDAが1998年に発表したレストラン向けのリテイルHACCPでは、すべてのアイテム(メニュー)を3つに分けるという考え方である。

  1. 加熱調理工程の無い食品加工(サラダ、刺し身、寿司、サンドイッチ)
  2. 加熱調理して、その日のうちに提供する食品加工(揚物、焼き物、煮物、蒸し物)
  3. 複雑なプロセス(弁当などの電子レンジ加熱、スープ、ソース、弁当)

となる。惣菜工場などでは、これをもう少し拡大して、調理群別にまとめて構築する。

例えば兵庫県の「集団給食・弁当調整施設」食品衛生管理プログラム認定基準では、米飯、煮物、焼き物、揚物、炒め物、蒸し物、和え物、サラダと果物、生食用鮮魚介類(刺し身・寿司など)、といった分類になっている。

調理群別ということは、調理機器システム別にすることになる。例えばフライ調理の場合、コンベアフライヤーで、天ぷら、唐揚げ、豚カツといった全てのフライアイテムを行なう場合、下処理はそれぞれ違うが、HACCPのCCPに当たる加熱調理殺菌は全て同じで、調理後中心温度が75℃以上、あるいは油の温度とコンベアのスピードといった連続的な監視で、HACCPを行なうことが出来る。グリルでも、全てをスチームコンベクションオーブンで行なっているならば、このHACCPを構築することになる。CCPは「75℃」で、内蔵の中心温度計でモニタリング、となる。

調理機械に入れる前段階は、下処理や調理直前のセットアップになるので、この工程は一般的衛生管理で行なうのだが、下処理室での一般的衛生管理は、個人衛生、清掃と洗浄、といった「5S」で行なうのが基本であるから、これは多種類のアイテムでも共通である。

例えば、グリルアイテムの場合、製造工程は、受入れ→保管→計量・混合→グリル→冷却→盛付け→冷蔵保存→出庫、といった工程になり、それぞれの工程の、危害の原因物質、危害の発生要因、発生防止処置、PP(PRP) or CCP、管理基準、モニタリング方法、改善処置、検証方法、記録文書名、を設定していくことになる。

HACCPの構築は、例えば、煮物(蒸煮窯でのHACCP)、焼き物(スチームコンベクションオーブンでのHACCP)、揚物(コンベアフライヤーでのHACCP)、炒め物(回転炒め釜でのHACCP)、蒸し物(スチーマーでのHACCP)、和え物・サラダ・果物・サンドイッチ・刺し身・寿司などの生食(生食の低温室での組み立て管理、例えば10℃以下の保持と保管のHACCP)といったものになる。

この工場はどういった形がよいか。

原材料は、原材料群別と温度帯別に保管される。これが準清潔ゾーンになる下処理室に出されて製造作業の最初の部分が始まる。その日の製造アイテムと製造順に合わせてスケジュールを作っておき、必要な量が下処理された後、品群別にパススルーの冷蔵庫に保管される。このパススルー冷蔵庫は普通の冷蔵庫でももちろん構わないが、調理室との間の完全な隔壁としても使えるし、衛生管理も徹底させることが出来る。

サラダやサンドイッチなどの生食の原材料は、他の原材料とは別に、生食ラインに直通の冷蔵庫に保管される。サラダで使われるトマトやレタスといった野菜が、煮物焼き物用のポテトやタマネギ等と一緒に一時保管されるのは良くないからである。そのため、余裕があるならば、生食の下処理室は仕切ったほうが良い。

加熱の調理室は、ボイルとスチームライン、グリルライン、フライラインの3つのラインが並列

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