2-3.特定のメーカーにオーダーが集中する時代
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2-3.特定のメーカーにオーダーが集中する時代

あるカニ加工メーカーが新工場を建設、11月に入り年末向けの繁忙期に入る頃から「売るものが無くなってきた」という。製造を間違えたわけでなく、遅れているわけでもない。要するに「売れすぎ」て販売する製品在庫が無くなってきているのである。そこで、ここ数年の全国的な傾向だが、特定のメーカーにオーダーが集中する現象の話をしたら、十分に思い当たるという。

この現象は、安全性と品質で信用の出て来ているメーカーに、多くのユーザーからの注文が集中することである。イクラのO-157事故があったが、あの事故の後、一時的にイクラの醤油漬けは売れなかったのだが、すぐにマーケットはイクラの醤油漬けを必要としていた。売れる商品で、消費者が求めていたからである。しかし、危害など危険のある製品はいくら安くても欲しくはない。こういったところに、以前からHACCPを行なっていたり、衛生管理に力を入れていた、業界の数からいえばほんの一握りのメーカーの情報が流れ、そのメーカーに注文が殺到したのである。

ここ数年の間に営業担当者の数を増やしてはいないのに販売が激増したので、現在の工場では間に合わなくなり、今回完全にHACCP対応の工場を建設することになったのである。

新工場は今までの工場の倍以上の生産が出来る設計になっているのだが、構想段階ですでに売り上げの更なる激増が予測されている。営業担当者は「そんな大きな工場を建てたら、売るのが大変」と恐怖感があるということなのだが、大丈夫、心配ない、黙って売れるようになるのだから。新工場の安全性と高品質がパワーとなって売れること間違いない、HACCPが強力な営業をするのである。

2-4.HACCPと投資をどう考えるか

HACCPは、まず、現状の認識を行い、問題点を解決することからスタートする。

HACCPはソフトウエアであり、知恵であり、アイデアで行なうものである。HACCPを進めるに当たって、まず現在の施設設備はそのままで構築するという考え方から始めたらいい。現在の工場で、どのように一般的衛生管理を行なったらいいのかを考える。知恵を出して出来るようにするのだ。その中で、ネズミの穴があったり、虫が入ってくるなどの場所があったらふさぐ。動線がおかしかったら機械や作業台を動かして直すことが出来ないかを考える。交差汚染の危険性を見つけたら、作業場所を離せるかを考え、だめならばパーティションを置くなどして工夫できないかアイデアを出す。サニテーションも居残りでやらせていたのでは早く帰りたくてやる気も出ないとわかったら、就業時間内で、科学的に手順を組んで行なう。これで古い施設でもクリーンにできることがわかる。

改造や買い替えは、現状の施設設備機器では危害になる可能性が高くなる場合には必要である。例えば、調理機械が古くなり、調理温度のばらつきが多くなり、しょっちゅう調理後の肉中温度が変化してしまうような場合、頻繁に肉中温度を計測していると作業効率は悪くなり、危害になる可能性が高くなる。このような場合は修理をするか新しくする必要がある。

塗り床の場合、何年かするとひびが入り、剥げてくる。剥げが目立つようになったら塗り直し修理が必要かというと、そんなことはない。剥げた部分は、下のコンクリートの間に汚れ、水が入り込み、そこにバクテリアが繁殖し、汚れが溜るから問題があるのだが、こ

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