2)効果測定(KPI)
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品が出来る。

経験は、ノウハウの塊とも、失敗の積み重ねともいう。

知識があるだけでは現場はうまくいかない。

教科書で勉強しても、現場は理想通りには行かないからだ。

東日本のある洋菓子工場で、シール不良によるカビの発生クレームが出てしまった。手作業で行なうヒートシールの不良だ。原因は、ベテラン不在で行なったため、シール器の調整と、シール状態の確認の両方が確実に出来なかったからだ。

この作業は3人ほどで行なうのだが、普段はベテラン1名と、一般レベルの作業者が2名のチームで行なっている。しかしクレームを出してしまった時は、数名居るこの作業のベテラン達が、休みだったり、他の作業に入っていたりして、結果的にベテラン無しのチームでの作業になってしまったのだ。

これは、力量不足によるハザードの発生だ。

では、どうしたらよいかというと、従事者の力量を決め、「この作業は、ベテラン1名を含むチームで構成しなければならない」と規定する方法がある。

従事者の力量は、たとえば3段階で決める。「マスター」「準マスター」「ジュニア」といった具合だ。ジュニアは「まだ1人で出来ない」、準マスターは「1人で出来る」、マスターは「ベテランで教育が出来る」ということになる。そして「作業には、マスターまたは準マスター、どちらかがいなければならない」と規定する。

その日の作業チームがこうなっているかどうかを確認してから作業に入る。そうすれば「たまたま新人ばかりでやってしまって、クレームにつながってしまった」ということが無くなる。

西日本のある加工肉工場で、この力量の考え方がわかり、検討に入った時、「社員よりも長年やっているパートの方が力量があることが多い」ということになった。ソーセージ製造におけるサイレントカッターの乳化作業や、薫煙加熱工程での作業はベテラン社員がやらなければならないが、焼き豚の紐かけ、真空パックの丁寧さとスピードなど、パートの方が上手なことがある。社員はそのパートを信頼し、任せている。自分がやるよりもよいからだ。

力量は、各製造工程毎に設定する必要がある。

ソーセージ製造ならば、下処理工程、カッティング工程、ケーシング工程、薫煙加熱工程、冷却切り離し工程、パッケージ工程と、それぞれの工程で、マスター、準マスター、ジュニアがいることになる。それぞれの力量には何が必要かを規定するためには、どういうことが必要か、その工程プロセスを分析することになる。このことはそのままハザード分析になる。

社員が工場の管理者になるための資格として、全ての工程で準マスター以上の力量を要する、とすることも出来るだろう。工場長になるための資格は、全ての製造工程でマスターであることが必要、となるシステムも考えられる。

力量とそのシステムを構築することは、食品安全に直結する。

2)効果測定(KPI)

a)KPIとは

自動車によっては、燃料残量が5リッターあたりを切ると燃料表示計が点滅したり音声で知らせる。故障したりランプが切れると表示される。昔の車は時速110キロを超えるとアラームが鳴ったのがある。

危険レベルを超える、あるいはその手前で告知するようになっていれば、危害を避けることが出来る。

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